ふと、頬に触れた指先が濡れていることに気が付いた。
透明な涙の滴は翳した掌の内でじんわりと乾いていく。
5年の悪夢から醒めた日以来、夢を見たことはない。
空虚な眠りの中で何を思って涙したのか、わからなかった。

もしも。
涙を流す価値のある相手に会うことができるのだとしたら、たとえそれがどんな悪夢の中であろうとも、 再び戻っていくのに。
自分に残されたのは、夢さえ見ることもできない現実だけだ。

掌を見る。
涙はもう、消えていた。

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たぶん2004年