5 季節は6月。 木々も新緑の爽やかを通りすぎ、溢れんばかりの青をまとい始めていた。 蒸し暑い時期とは言えさえずる鳥の声は、自然の中でしか味わえない涼味をかもしだしている。 ここは都心の一角にある公園。 法廷の中休みに、成歩堂はひとり公園に散歩にきていた。 新進気鋭の若手弁護士として、午前午後とびっしり法廷が入っている――といえば聞こえはいいが、 単に慌ただしいだけだ。 まだ若輩もいいところ、取引先との顧問料だけで生活していけるような身分ではなく、 来るもの拒まず、去るもの追いすがり、の勢いで仕事を受けなければ家賃すらままならない。 そんな毎日の息抜きに、時間が取れればこの公園をぶらつくようになった。 公園といっても子供が遊ぶような遊技場ではなく、美しい花壇や噴水を構えた広大な庭園である。 大きく茂る緑に囲まれた、まさに都心のオアシス。 虫の声に子供時代を思い返すのも楽しいし、茂みの側で 昼寝をしているノラネコを構うのも面白い。 平凡な茶トラだが愛らしい顔立ちの牝猫は、何度か昼ごはんをお裾分けしてやるうちに頭を撫でさせて くれるようになった。 今日もツナサンドの残りを彼女に振舞ってから、午後の憂鬱な法廷に戻ろうと公園の出口に足を向けた 成歩堂は、見なれないものを見つけて歩みを止めた。 何やら派手派手しいものがそこにある。 御剣だ。 ベンチの上で薔薇に埋もれている御剣だ。 いや、正確には御剣が大輪の紅い薔薇の花束を抱えてベンチに座っている。 「うわ…」 数十メートルと離れているにもかかわらず、成歩堂は思わず後ずさった。 御剣は薔薇の似合わない男ではない。 むしろ似合う。似合いすぎて怖いくらい似合う。 だから、凄まじく辺りの光景から浮いていようが、薔薇の花束を抱えて座っていること自体は構わない。 問題は… (むしってる…?) どういうわけか。 御剣は膝に抱えるように抱きしめた薔薇の花びらを何か呟きながら1枚1枚むしっている。 こうなると、整った容姿と相まってすでにホラーの域だった。 |